2010年02月09日 (火) | 編集 |
生暖かくて、風の強い一日であったね。
あたくしは風がきらい。とくに、向かい風の小面憎さといったら、どういうことであろう。
朝、少ない前髪を無理矢理に整えた苦労も、ビューンと一発で崩される。サハラ砂漠のように広いおでこが丸出しになるのだぜ。慌てて髪を戻す。強風に吹き払われる。戻す。払われる。海原はるかの芸か!
ああ、こんな日は思い出す。
昔、大好きだった女の子とディズニーランドでデートをした。女の子と一緒にあれこれのアトラクションに乗る楽しさは、どうであろう。ニヤニヤしどおしで、大変に不気味なあたくし。
「スプラッシュ・マウンテンに乗ろう!」
と、女の子がいった。
「おういえ、乗るぜ乗るぜ。君の望むままに何回でも乗るぜ」
あたくしは答えたの。
ご存知であろうか。スプラッシュ・マウンテンを。
こんなアトラクション。
あたくしたちは、最前列の席に陣取った。滝つぼにドカーンと突っ込み、派手に水しぶきがあがって、思い切り水をかぶっちゃった。うわー、なんじゃこら、濡れちゃったじゃーん。へへ、君も濡れちゃったね。へへへへ、ゆっくり拭いて上げようね。でも楽しかったね。へへ。
アトラクションを出ようとした、その出口が丑寅の方角。鬼門であった。ぬおー、加藤保憲はかったな!
「その決定的瞬間はスプラッシュダウン・フォトでお求めになれます」
滝つぼにとびこまんとした、その瞬間を写した画像が壁一面に。自分の写真を見つけた。見なかったことにして足早に立ち去ろうとした。が、同じ画像を目ざとく見つけた彼女は、足を止めてじっと写真に見入っているの。
「もう行こうよ」
「……」
「もう……」
「……」
「あの……」
「……すごくない?」
「すごくないです」
「いや、ちょっとすごいって!」
彼女が容赦なく「ホラ! これ!」と指差す先には、あたくしたちが写った画像が。あたくしの何も隠すもののない、あからさまなむき出しおでこを、ビシッと指し示すのである。
いや、あの、言われなくても分かってるので。さあ、先に進もうじゃないか。人生、過去を振り返っても楽しくないよ! 明るい未来に進もうじゃないか! あたくしのおでこが光を乱反射してるから、文字通りに明るいはずだよ!
と申し上げても、彼女ったら、
「いやちょっと、すごすぎない? 買おうよ!」
と、心の傷に塩を塗りこむのである。
「もういいですから」
「よくないって! ほんとにすごいよ!」
「もう許してえええええ」
半泣きになったあたくしに、ようやく彼女も歩き出した。彼女はとっても上機嫌で、「すごいもの見ちゃったなー」とつぶやいている。チラリとあたくしのおでこに視線を送ってきたかと思うと、くるりと、あらぬ方向を向いた。クレヨンしんちゃんみたいに、頬がニヤリと笑っているのが見えてるのだけども! 見えてるのだけども! うわあああああああああああああん。
そんな想い出が心に蘇った、強風の今日。なんだか涙が止まらないのは、目にゴミが入ったからかなー。
あたくしは風がきらい。とくに、向かい風の小面憎さといったら、どういうことであろう。
朝、少ない前髪を無理矢理に整えた苦労も、ビューンと一発で崩される。サハラ砂漠のように広いおでこが丸出しになるのだぜ。慌てて髪を戻す。強風に吹き払われる。戻す。払われる。海原はるかの芸か!
ああ、こんな日は思い出す。
昔、大好きだった女の子とディズニーランドでデートをした。女の子と一緒にあれこれのアトラクションに乗る楽しさは、どうであろう。ニヤニヤしどおしで、大変に不気味なあたくし。
「スプラッシュ・マウンテンに乗ろう!」
と、女の子がいった。
「おういえ、乗るぜ乗るぜ。君の望むままに何回でも乗るぜ」
あたくしは答えたの。
ご存知であろうか。スプラッシュ・マウンテンを。
丸太ボートでアメリカ南部の沼地を進みながら、ディズニー映画『南部の唄』の世界をめぐっていきます。と、突然目の前に現れる落差16mの滝。ボートはその滝つぼめがけ、最大傾斜45度のダイビング! その決定的瞬間はスプラッシュダウン・フォトでお求めになれます。
(東京ディズニーリゾート内の説明より)
こんなアトラクション。
あたくしたちは、最前列の席に陣取った。滝つぼにドカーンと突っ込み、派手に水しぶきがあがって、思い切り水をかぶっちゃった。うわー、なんじゃこら、濡れちゃったじゃーん。へへ、君も濡れちゃったね。へへへへ、ゆっくり拭いて上げようね。でも楽しかったね。へへ。
アトラクションを出ようとした、その出口が丑寅の方角。鬼門であった。ぬおー、加藤保憲はかったな!
「その決定的瞬間はスプラッシュダウン・フォトでお求めになれます」
滝つぼにとびこまんとした、その瞬間を写した画像が壁一面に。自分の写真を見つけた。見なかったことにして足早に立ち去ろうとした。が、同じ画像を目ざとく見つけた彼女は、足を止めてじっと写真に見入っているの。
「もう行こうよ」
「……」
「もう……」
「……」
「あの……」
「……すごくない?」
「すごくないです」
「いや、ちょっとすごいって!」
彼女が容赦なく「ホラ! これ!」と指差す先には、あたくしたちが写った画像が。あたくしの何も隠すもののない、あからさまなむき出しおでこを、ビシッと指し示すのである。
いや、あの、言われなくても分かってるので。さあ、先に進もうじゃないか。人生、過去を振り返っても楽しくないよ! 明るい未来に進もうじゃないか! あたくしのおでこが光を乱反射してるから、文字通りに明るいはずだよ!
と申し上げても、彼女ったら、
「いやちょっと、すごすぎない? 買おうよ!」
と、心の傷に塩を塗りこむのである。
「もういいですから」
「よくないって! ほんとにすごいよ!」
「もう許してえええええ」
半泣きになったあたくしに、ようやく彼女も歩き出した。彼女はとっても上機嫌で、「すごいもの見ちゃったなー」とつぶやいている。チラリとあたくしのおでこに視線を送ってきたかと思うと、くるりと、あらぬ方向を向いた。クレヨンしんちゃんみたいに、頬がニヤリと笑っているのが見えてるのだけども! 見えてるのだけども! うわあああああああああああああん。
そんな想い出が心に蘇った、強風の今日。なんだか涙が止まらないのは、目にゴミが入ったからかなー。
想い出は人を切なくさせる それはあなただけじゃない
心に生まれた影が多い時程 涙は出るものなの
──戻れない明日 / aiko
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