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捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2010年01月25日 (月) | 編集 |
■孤宿の人 / 宮部みゆき(新潮文庫)

北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた讃岐の国・丸海藩。江戸から金比羅代参に連れ出された九歳の「ほう」は、この地に捨て子同然に置き去りにされた。幸いにも、藩医を勤める井上家に引き取られるが、今度はほうの面倒を見てくれた井上家の琴江が毒殺されてしまう。折しも、流罪となった幕府要人・加賀殿が丸海藩へ入領しようとしていた。やがて領内では、不審な毒死や謎めいた凶事が相次いだ。

──文庫上巻のあらすじより


お前は阿呆だから、呆─ほう─だ、と名づけられた女の子。

ほうの母親は、江戸の建具商、神田屋の女中をしていた。若旦那と通じてしまい、子供を身ごもる。それが、ほうだった。ほうの母親は、ほうを産み落としてすぐに死ぬ。神田屋にとっては邪魔な子供だけれど、若旦那の胤である子供を殺すのは障りがある。

だから、ほうは捨て子同然の扱いで、里子に出される。ほうは、誰からも必要とされない子供として、ひどい暮らしを送る。しまいには、江戸からはるか彼方の、四国は讃岐国(現在の香川県)にある金比羅さんへ代参の旅に送り出され、そこで捨てられた。

ほうを中心に、幾人もの人間が関わって、それぞれの人生が重奏になって物語られる。

家族を惨殺する罪を犯した流人・加賀殿の存在をきっかけにして、誰もが抱えている負の感情が、あちこちで姿を現し始める。愛があり、地位があり、虚栄心がある。対立を利用する者、運命に抗えず翻弄される者。武士も、町人も、それぞれの方法で、少しずつ歪んでいく。

各人のひずみがよりあわされて、ついに破断界を超えたとき、藩を揺るがす大騒動へと発展する。ぼくらが普段、乗っかって暮らしている安穏な秩序など、たちまち崩れて消える。いかにもろくて危ういものか。終盤の怒涛の展開は息をもつかせない。

物語の調べを操る宮部みゆきの技量のあざやかさは、いつにもまして冴えている。円熟と言っていいのかもしれません。間違いなく力作。

同時に、いつもの宮部みゆきと雰囲気が違う感じに、とまどいも覚えました。

今作では、今までの宮部作品にはなかった、本当に次から次へと……。ああ、これは言えない! 自分で読め!(またか)

登場人物と作者の距離がいつもと違う印象を受けます。登場人物の数が多いこととも関係があるのか、やや突き放した感じがあり、その分、宮部みゆき本人が行間からチラリと顔を覗かせているような。

たとえば、セリフに人生訓めいた説教臭さが出てくるときがある。実は、以前から時代物の作品で少しずつ感じていたことなのですが、今回は少し強い気がします。物語上では自然な流れではあるのですが、どうしても言わせなければならないかというと、どうなんでしょうか。

それでも、物語の大きさ、まとめのうまさ、人々の思いの強さ。宮部みゆきの色はきちんと生きています。読後はちゃんと、満足、満腹!

これはこれで新境地なのか、それとも、ぼくの単なる気のせいなのかな。読んだ方の感想をお待ちしています。
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コメント
この記事へのコメント
ミユウさま、こんばんは!

じっくり読むつもりが、続きが気になって、
あっという間に読み終わってしまって。
本当に読ませますね。

ドリームバスター、まだ読んでないのですよー。
次を、ブレイブ・ストーリーにするか、ドリームバスターにするか。
ミユウさんの紹介記事を見て、迷い中なのです。
いえーい!
2010/01/31(日) 02:18:50 | URL | たれぞう #/blqkyuM[ 編集]
『孤宿の人』既読です!
>物語の調べを操る宮部みゆきの技量のあざやかさは、いつにもまして冴えている。円熟と言っていいのかもしれません。間違いなく力作。
『孤宿の人』は群像劇スタイルのストーリーが上手にまとめられた作品だと思いました。
読ませますよね。

個人的には、『ドリームバスター』シリーズの続きが気になってます♪
2010/01/30(土) 10:40:53 | URL | ミユウ #-[ 編集]
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