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捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2017年10月07日 (土) | 編集 |
――6.世間話。

警備員は、平日の昼間は病院の出入り口にたって案内業務に就いている。

診察の待ち時間が長いことにしびれをきらした人が出入り口にやってきて、警備員と世間話をして時間をつぶすことが、よくあった。

その時は、60歳くらいの男性と話をしていた。もう3時間も待たされている、長すぎて疲れちゃった、と男性は言った。

「おれ、この近所に住んでるから、ずっと昔からこの病院通ってるんだ。改装されてキレイになったけど、昔は、幽霊病院って言われてて、このあたりじゃ有名だったんだよ」

「そうなんですか」

「今でも出るの?」

「どうなんでしょう。ぼくは、よく分からないです。でも、夜中はやっぱり気味が悪いですよね」

はい今でもよく出るみたいです、とは言えないので、てきとうにごまかす。

「そうだろうね。実はおれ、入院してるときに何度も幽霊見たんだよ。同じ病室の人も見たって言うの。こわかったよ」

「うわー」

「おれが見たのは二階の角部屋。黒い人影みたいなのが、たくさん出たり入ったりするんだよ。気持ち悪かったな。改装する前の話よ。むかしは二階が病棟だったけど、いまは変っちゃってるよね。何があるのかな」

いま、そこは透析室になっている。


――7.べつの警備会社。

とある大手の警備会社から移籍してきた人と話をした。

「あなた、病院にシフト入ってるんだって?」

「はい。○○病院ですよ」

「げっ、おれ、そこ知ってる」

「そうなんですか?」

「おれが前に勤めてた警備会社、ここの警備会社の前に、○○病院と契約してたんだよ」

「ほう」

「いろいろあって契約を解除してさ。そのあとに、この警備会社が引き受けたみたいだね」

「知りませんでした」

「おれ、前の会社のとき、○○病院にシフト入らないかって言われて、絶対いやだって断ったんだよ。だって、みんな幽霊出るって言うんだもの。おれ、幽霊こわいから」

「まじですか」

「どこの病院も、幽霊の噂はつきものなんだけど、たいてい噂だけなんだよ。前の警備会社でも、いくつか病院受け持ってたからさ。でも、○○病院だけはホンモノだったらしい。だれを配置しても見ちゃうんだよ。みんな嫌がって拒否するからシフト埋まらないし、契約の金額的にも渋くておいしくないから、契約を解除したんだよね」

「はあ」

「夜の巡回してると、一階の玄関から入ってくる廊下と、二階の病室に必ず出るし、みんな見るって言ってた」

病院の改装は、新しい警備会社に変ったのちの話。この話は、改装する以前のものだ。改装以前、現在、小児科がある場所に正面玄関があった。玄関から入ってくる廊下というのは、すなわち、つきあたりに小児科がある廊下のことだ。

二階の病室というのは、おそらく、透析室になっているあたり――。

この移籍してきたばかりの人に、病院メンバーはまだ誰も、病院に出る幽霊の話などしていなかったのだが……。

(おわり)
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