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捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2011年12月06日 (火) | 編集 |
Mさんという女性が、高校入学を控えた春休みに体験した話だ。

友人二人と、近くの海に出かけた。水はまだ冷たい時期だから海には入らず、おしゃべりをしながら堤防や砂浜を散歩した。

あたりが薄暗くなり始めたころ、見るからに身なりが不潔な中年男性が数人、酒瓶をぶら下げて現れた。海辺で酒盛りをするつもりだろう。

歳若いMさんたちは、からかわれるのも嫌だからと、帰ることにした。

海から少し離れた道を歩いているところで、友人の一人が、

「ねえ、今の人、おじさんたちにからまれたら、あぶないんじゃない?」

と、言いだした。

(今の人?)

誰のことか訊ねると、たった今、目の前を、長い髪で白いワンピースを着た若い女性がすれちがい、海に向かって歩いていったのだという。

Mさんは、そんな女性を見ていない。

ところが、もう一人の友人にも見えていたようで、

「注意してあげよっか」

「そうしようか」

と、言い合っている。

(そんなはずない)

と、Mさんは思った。よそ見をしていたわけでもなく、ぼんやりしていたわけでもない。幅のせまい道で、自分だけが、すれ違う人に気がつかないことなどありえない。

「わたし、そんな人見てないよ」

Mさんは言ったが、二人は、女性がヒールを履いていたことまで覚えていた。この先は、砂浜だというのに、ヒール?

「おかしいよ、その人、変だよ。ほっといて帰ろう」

Mさんは懸命に訴えたが、はっきり女性の姿を見たと信じている二人は、とりあってくれなかった。親切心を起こして、女の人に声をかけに海の方に走っていく。

Mさんは、ついていかずに、その場に留まって二人が帰ってくるのを待っていた。

しばらくして戻ってきた二人は、

「おかしいな、どこにもいなかった」

と言い、何度も首をかしげている。

女性とすれ違ってから、ほんのニ、三分で、元気盛りの中学生が走って追いかけたのに、姿が見えない。姿を隠すような場所は、どこにもない。

(その女性は、やっぱり……)

あらためて怖くなったMさんは、二人を促して、急いで家路を辿ったのだという。
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