FC2ブログ
捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2011年12月05日 (月) | 編集 |
小六時の担任T先生は、よくお化けを見る人だった。

その日、T先生は、児童が帰ったあとも教室で仕事をしていた。一段落つき、時計に目をやると、かなり遅い時刻になっている。

(そろそろ帰ろうか)

職員室にもどろうと、荷物をまとめ、小脇にかかえて歩き出した。

教室と職員室は、別の校舎にあった。渡り廊下を歩いて、職員室のある校舎へ入ろうとした手前で、なんともいえない嫌な気配に足を止めた。

首のうしろをチリチリ刺激される感じ。今まで、この感覚がくる時には幽霊を見てしまうことが多かったから、T先生は自然に身構えた。

校舎の間に給食室がある。どうも、給食室のほうから気配がするようだ。

給食の職員は全員帰っており、誰もいない。まだ帰らない子供が遊んでいるのだろうか。とうに下校時刻は過ぎている。もし、子供がいるようなら帰るように言わなければならない。

T先生は、気が進まないながらも確認することにした。

渡り廊下を外れて、給食室に歩いていく。給食室の扉は、きちんと鍵がかかっている。耳をすましても、声も物音も聞こえない。気のせいだろうか。念のため、給食室の裏側も覗いてみることにした。

(あっ)

T先生は息をのんだ。

人の形をした、かげろうのような薄い影が立っている。目の錯覚かと疑ったが、確かに人影だった。

影は、T先生の見ている前を、右から左へとゆっくりと移動していく。

逃げようという心はあるものの、つい、目がモノの動きを追ってしまう。

こちらに向かってくるでも、消えてしまうでもない。今度は左から右へ。また右から左へ。どうやら、ある範囲を行ったり来たりしているらしい。

やがてT先生は、人影がまっすぐ立っているのではなく、中腰で頭を下げているように見えることに気がついた。落し物を探すかのように、地面を気にしているような感じ。

T先生は、

(さがしもの?)

という連想を得て、あることを思い出した。ハッと我に返ると同時に、強烈な悪寒が背筋をゾクゾクと走りぬける。

(このまま見ていてはいけない)

慌てて視線をそらし、職員室に逃げこんだという。

この出来事のすこし前、小学校の前を走る県道で、夜中に交通事故が起きていた。

大昔の街道が元になっている道路で、狭くて曲がりくねっている。道が急角度にカーブする、ちょうど角の位置に学校が建っているため、バイクや車が、学校の壁に激突する事故が頻繁に起きていた。

そのときの事故では、バイクに乗った若い男が、かなりのスピードでカーブに進入して、曲がりきれずに電柱に激突した。

遺体は、ぐしゃぐしゃに潰れた無残な状態だったというが、とくに頭部は、まともに電柱に衝突したせいで、細かい肉片となって砕け散り、一部は、小学校の敷地内にまで飛びこんだ。その場所が、ちょうど給食室の裏手のあたり。

遺体は、児童が登校してくるまでに片付けられたが、警察がいくら探しても、ついに右の眼球だけが見つからなかったそうだ。

人影は、無くした右目を探していたのかもしれないね。と、T先生は言った。

あれから、かなりの時がすぎた。

ときおり、その男性は右目を見つけることができたのだろうか、諦めて探すのをやめただろうか、それとも未だに探し続けているのだろうかと、懐かしさとともに思い出すことがある。
スポンサーサイト

コメント
この記事へのコメント
うん^^
2011/12/26(月) 03:57:47 | URL | MOMO #JalddpaA[ 編集]
遅くなりまして、失礼しました。

杖をさがす人!?
勤務先に現れるので……?
2011/12/16(金) 23:08:17 | URL | たれぞう #/blqkyuM[ 編集]
杖を探しに来る人はよくいるらしい
2011/12/11(日) 23:27:00 | URL | MOMO #JalddpaA[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック