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捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2011年06月17日 (金) | 編集 |
なんとなく、綿矢りさ『蹴りたい背中』を読んでいた。古本屋で100円で売ってたハードカバーなの。

……あっ? 『刺したいお腹』とか、どー?

砥石が鳴る。シュンシュンと小気味のいい音をたてて、砥石の上で刃をすべらせていく。わたしはナイフを研いでいる。刃渡り20センチ。マチェットという、ナイフというよりはナタの一種。一心不乱に、なんども往復させる。孤独な作業だけど、なにもかも忘れて没頭できたりするしね。銃刀法? ハッ。ていうこのスタンス。あなたたちは、結婚して幸せな家庭を築いたり、友だちと飲み歩いたりしてるみたいですけど(苦笑)、わたしはちょっと遠慮しておくんです。女なんかバカでしょうがないですから。UOを45分、モンハンを35分、ガンダムを25分、ゲームの時間割を綿密に組んであって、崩すなんでできないですから。ま、なにかあったときのためにマチェットに刃をつけておきますよ、ええまあ、いちおうは。っていうこのスタンス。



きゃあ、たったいま殴り書きしただけと思えぬ、このクオリティはどうであろう。あたくしも芥川賞を狙えるかしら?

ほかに『インストロール』とか『夢を与えてください』とか『勝てずにふるえてろ』とか、いくらでも思いつくのだけど、すべてパクリというのが、いかんともしがたい。うふーん。


*本日のエピソード*

「まあいちおう、秋葉原の事件ってあるじゃないですか」

「無差別のやつ?」

「ええ。加藤はナイフの扱いをわかってると思いませんか」

「えー、どいうこと?」

「しらないんですか。ナイフって、ふつうに持つと、刃が縦になるじゃないですか。で、そのまま刺すと、肋骨にあたって奥に入らないじゃないですか。ですから、刺すときは刃を横にもつべきなんです。で、肋骨の間をとおして刺したあとに、刃をぐりぐりすると内臓が傷つくので、ぜったいに人を殺せるんです。まあ、なんつったらいいんでしょ、ナイフつかいの常識じゃないですか、そういうの」

「しらねーよ、そんなの」

「はあ、そうですか。わたしはナイフにくわしいんで、加藤はすごい男だと思ったんです」

「へー、そうなんだ」

「このまえ、ネットの通販で、10センチくらいのサバイバルナイフを買ったんです。で、刃がついてないんですけど、自分で研いでつけました」

「……それ、逮捕されるんじゃないの?」

「ええ。見つかったら逮捕されると思います。でも、なにかあったときのために必要じゃないですか」

「なにかって、なによ」

「いえ、わかりませんが、なにかのためです」

「というか、キミ、何本目のナイフなの?」

「ええ。10本くらいあります。わたしは刃物が好きなんです。ランボーが持ってるみたいなのもあります」

「それ、全部、刃つけてるの?」

「ええ。刃がないナイフなんて、使えないじゃないですか」

「だから、なにに使うのよ」

「いえ、ですから、なにかのときのためです」

「ヘー、そうなんだ。ふーん」
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2011年06月15日 (水) | 編集 |
ごめんなさい、また司馬遼太郎の『峠』を読みなおしているの。10回は、間違いなく読んでいるぜ。愛してやまない、河井継之助さま。

そして、いんちき小説の更新を先週おやすみしたわけは『峠』の再読にある。

それというのも『峠』にでてくる文章が、いんちき小説のほうに、ほとんど引き写しのようにして出てくるのを見つけてしまったのであるよ。やっべえええええ。

たとえば、こう。

『峠』

なにごとも初体験というのは印象を際限もなく大げさにするものらしいが、ことに別種の人間を見ることほどすさまじい衝撃はない。


『いんちき小説』

なにごとも、はじめての体験は心に響くものだが、それにしても印象が強すぎた。


ぐわ、ぐわあ。誓って言うけど、あたくし『峠』の文章を意識していたわけではないの。すっかり忘れていたくらい。

それなのにいざ書いたら、書き出しが一緒のうえに文意もほぼ同じって、盗用だと指摘されても、まったく反論できないじゃねーか。

いくども繰り返して読んでいたから、司馬センセーの文章が自然と頭のなかに住み着いちゃったのである。それが、まるで自分の考えであるかのように出てきちゃったにちがいない。うわあああああああん。

実は、こういうのを、もう一箇所みつけてしまった。あわてて修正しているところなのだけど、ショックで時間がかかっている次第。


あたくしは人見知りである。こうやってブログでは、さらりと書いているけれど、そうとうに重症な部類。今まで、あちこちで挙動不審な姿を披露してきた。そのたびに「また、やってしまった」と死にたくなってきた。

なにせ、この年になっても、あたらしい出会いがとっても怖いのである。ほんとうに自分が情けない。

だから、不器用で、気が小さく、人づきあいがうまくいかない人の気持ちはよくわかる。失敗談や、愚痴はいくらでも聞くし、応援したいし、どうしたらいいかは一緒に考えたいくらい。

しかしながら。

「人見知りだから、××はやらない、できない」

という言い訳をつかうのには賛成しない。自分が、そういう性向をもつからこそ、その言い訳が危険であることを身にしみている。

たとえば、こういうエピソードはどうだろう。

U「ラーメン食べようよ」

S「いいですね」

U「どんなラーメンにしようか」

S「うまいラーメン」

U「……好みって、あるでしょ」

S「うまいラーメンが好みです」

U「だからさ、どんなラーメンがうまいと思うの?」

S「うまいラーメンが、うまいと思います」

U「脂がうまいとか、あっさりがうまいとか、人によってあるじゃない」

S「いえ、ですから、うまいラーメンならなんでもいいんです」

U「じゃあ、どっかうまい店知ってる?」

S「そんなもの、わたしが調べてるはずがないじゃないですか」

U「……あのね、こういうのはみんなで楽しもうって話なんだよ。調べない、知らない、ですむの?」

S「いえ、わたしは調べるのとか苦手なんです。ですから、調べるの上手な人が調べたほうがいいじゃないですか。わたしは、うまいラーメンなら、なんでも食べます」

U「あっ、そ」

なぜ調べるのが苦手かといえば、調べるのが怖いから。自分はうまいと思って調べた店でも、相手がまずいと悪いから。自分に自信がないから。失敗する自分が許せないから。

でも、これって、たとえ悪意はなくて、本人にとっては重大なことでも、それを言われたほうは手間暇かけるのだから「楽をしたいから、お前が働け」と言われたのと同じなのよね。

すべての「私は××だから、××をやりません」の言い訳は、「私の分を、あなたが働いてください。私を楽させてください」を含んでいる。言う方に、その気がなくても、現実にそうなるのである。

「私は人見知りだから、挨拶できません」

となれば、言われたほうは、ふたり分の挨拶をしなきゃならない。

「私は知識がないから、調べません」

といえば、言われたほうは毎回調べなきゃならない。

「私と遊ぶと、あなたに負担がかかりますよ、私はお荷物ですよ」と宣言してるよね、自分で自分の価値をさげてるよねと思うのだけど、これがわからない人が、おそろしいほど多いのである。

UOのときには「白豚(ボスを倒すための構成のキャラ)作ってくれないかな?」とお願いしたら、「いや、私は趣味で遊びたいから」と断られた。それも、一人や二人じゃないの。これって「おれの趣味を支えるために、お前は趣味を捨てて効率キャラで働け」と言ってることに他ならないでしょ?

あたくしは淋しいと死んじゃうので、人と会うと気が狂いそうになる小心者ながらも、草野球の世話人をやるし、食事会を呼びかけるし、UOでは、おけつだして騒ぐのである。これらを楽々やってると思ったら、大間違い。毎回、血ヘド吐きそうになっておる。

ごんたくんと、はじめて二人で秋葉原探索したときは、ごんたを殺すか、おれが死ぬか、のような気合で行った。きっと、緊張で目ばかり異様にギラギラ光ってて「なーに、コイツ?」と思われたに違いない。きゃあ、やっぱり殺す!

だから、なにかでリーダーになれば、

「なぜ、みんなは自分の指示なんかに従ってくれるのだろう」

と、あたくしは考えずにいられない。あたくしって、何者なの? 中学生みたいな問いを、今でも胸の中にもっている中年おっさん。わあ、これ読んでるヤツ、全員殺す! これって殺人予告? 通報しないで、通報しないで!

そういうあたくしに『峠』の河井継之助さまは、こう教えてくれたのである。

「人間は、立場で生きている」

と。そうだよな、立場だよな、と心にささったのが、今から15年も前の話――。この話のつづきは、また来週。
2011年06月11日 (土) | 編集 |
みなさん、ごめんなさいごめんなさい。

あたくしったら、ギルドの狩りのあと「ねまーす」と挨拶して落ちたというのに。寝つかれず、布団のなかで悶々と身悶えしたすえに、ふたたびUOの世界にまいもどった。ステドラソロ討伐など、つかまつってしまったのでござる。

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きゃあ、ちょう迫力。

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きゃあ、死んだわ、ごめんなさい。

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でも、めげないわ。

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めげようが、めげまいが、どっちにしても死ぬことに変わりはない。

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うおおおおお、まけねーーーーーー!

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また死んで……。予備の乗りドラを待機させているあたりが、経験をつんだおっさんの、用意周到なところである。世の中で、もっとも信用ならないのは自分自身だから。

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このあたりで、すでに午前3時半くらい。いい年こいた、おっさんの所業とも思えぬ、ありさま。

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もはや、なにも申すべきことは、ござらぬ。これがバリサルダリーダーSなら、とっくにパソコンのコード類を引きちぎり、液晶にモノ投げつけて、たたき割ってるところである。そして、こう言うの。

「まったく、パソコンの野郎、おれをバカにしてるんですよ。相手が人間なら、言って聞かせることができるじゃないですか。でも、パソコンは話ができないじゃないですか。だから、思い知らせるには壊すしかないじゃないですか。クソパソコンの野郎、おれをバカにしやがって。死ね! 液晶こわしたノートパソコンは20万で買ったばかりですが、後悔はありません。わたしはバカにされることが大嫌いなんです。パソコンのせいで死んだのだから、壊すのが当たり前なんです。絶対に」

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がんばるのよ、あたくしー。人生でがんばらない分、UOでがんばるのよー。

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きゃあ、がんばったわあああああああ。全身にびっしょりと汗をかき、おでこがテカテカしている。めぼしい戦利品はなにもなかったけど、輝いてるぜ、あたくし。これが生命の輝きというやつだぜ。

25日の土曜日に食事会をやろうと思うの。ラーメン食べたり、ハンバーグ食べたり、飲んだりしようと思うの。きっと、うさこはんが参加してくれると信じて、爽やかな気持ちで寝ることにした。おういえ。
2011年06月08日 (水) | 編集 |
「トモなんか、きらい!」

背後から、キンキンと耳に刺さるような甲高い女の叫び声がひびいた。夕方には、まだ少し時間があるころの、マクドナルドでのこと。

「もう、きらい、バカ、きらい!」

6人のテーブル。女が4人と、男が2人。女は席から立ちあがり、むかいの男にむかって激しく罵声をあびせかけていた。こいつがトモであろう。トモは謝るわけでもなく、居直るわけでもなく、曖昧な笑顔をうかべて女の顔を見上げている。

「ばかばかばかばか!」

トモの、どっちつかずの態度が、怒りの炎に油をそそぐのであろう。女はどんどんヒートアップしていき、飲み物を投げつけそうになった。あわてて隣の席の女が止めにはいる。

「ハルナ、やめなさい」

「ばかばか!」

ハルナと呼ばれた女は、身体をおさえられながらも大暴れして、トモをののしり続け、こう言った。

「もう、トモとは、わかれる!」

それを聞いたトモが、くしゅっと顔をゆがませて、しくしくと泣き出したのである。

「トモとわかれて、リュウにする!」

ハルナは、そう宣言してリュウを見た。ところが、リュウはふたりの争いなど、どこ吹く風といった態度で本を読みふけっている。まるで頓着していないのである。乙女心を傷つけられたハルナは、むっとして、余計に機嫌が悪くなった。

「わかれて! いますぐ、わかれて!」

トモはこらえきれずに、うわーん、うわーんと声をだして大泣きをはじめた。

「あらあら、トモくん、あらあら、謝りなさい、ハルちゃんに謝りなさい」

そう言って、トモの背中をやさしくなでるのは、お母さんであろう。トモくんは、泣く合間に切れ切れに「ごめん、な、さい」とかろうじて声を出すものの、ハルナちゃんは許さない。

「やだ! わかれる! ぜったい、わかれるー!」

ハルナちゃん、トモくん、リュウくんはともに5歳くらい。きっと幼稚園のお友だち。お母さんに連れられて、マクドナルドにおやつに来たのだが、とんだ別れ話がもちあがってしまったと見える。

きゃあ、5歳でおつきあいだなんて、おじさん許さないわ、許さないわ、おじさんが女性とおつきあいしたのは20歳すぎてからだわ。

なお、恋のかけひきをくりひろげるハルナちゃんとトモくんを尻目に、リュウくんは買ってもらったらしい絵本に夢中。キミは、なかなか見所がある。まるで幼い頃の、あたくしのよう。だけど、あんまり周囲と自分の世界を切り離してると、モテ度0で、さみしい人生を送ることになるから、このことだけは留意しておきたまえ。

トモくんのお母さんは、しきりに「謝りなさい」とトモくんを促す。そのとおりである。怒り狂った女の子をなだめるのは、ひたすら謝りたおすしかないのである。

トモくん、謝りなさい、謝りなさい、わけもわからず謝りなさい。すべて自分が悪かったと言いなさい。土下座はしてはいけない。卑屈になってはいけない。だけど、真摯に、いや真摯なフリをして、徹底的に謝りなさい。おじさんは、この年になって、やっと分かったけど、もう手遅れよ。

「ばか」だの、「きらい」だの、「わかれる」だの、ハルナちゃんが発する言葉が、あたくしの心にいちいち痛い。あたくしも、さんざん浴びせかけられたぜ。20歳すぎてからの、それらの言葉は、ほんとうに心をえぐりとっていくの。傷口から大切ななにかが奔出してゆくの。

ああああああああ。まったく関係ないのに、あらそいの余波をくらい、どんより落ちこむ謎のおじさん一匹。

それにしても、子どもは恐ろしいね。ハルナちゃんは、どこからそういう言葉を覚えてくるのだろうね。……あれ、もしかして、ハルナちゃんのお母さんが、旦那に叩きつけてる言葉じゃないかしら?

「ろくでなし、でくのぼう、甲斐性なし、今すぐ別れて! 離婚してーーーーーーーーー!」

毎晩のように、くりかえされる喧嘩で、ハルナちゃんも自然と覚えてしまったのではなかろーか? なぜなら、ハルナちゃんのお母さんが、陰のある、えもいわれぬ表情をしているから。おお、きっとあたくしのにらんだとおりに違いない。

……と、こういう根拠のない妄想で、このブログは成り立っているのである。おういえ。

切なくなってしまった、あたくし。このやるせない心をまぎらわすには、どうしたらよかろうか?

タイミングよく、IRCに、うさこはんがログインしてきた。おおお、わが癒しの女神、うさこはんよ! さっそくに家に呼びつけた。

「うさこはん、大切な話があります」

「え……」

おびえた表情のうさこはん。

「じつは」

「う……」

「騎士団やめました。騎士団キャラを、弓キャラに変えるから、装備つくってください!」

「……どうせ長続きするはずないと思っていました」

「あたくしを分かっている。さすがです」

「おういえ」

「おういえ」

ということで、キャラの構成を大幅に見直し中。騎士団は過去の思い出となって流れ去った。次は、野伏の「染井党」を始めることにする。

「どうせ、またすぐに飽きるから……」

うさこはんがつぶやいた。あたくしの最大の理解者うさこはん。ラヴである。

「ぜったいに、いや」

そっちのつぶやきは、聞かなかったことにするわ。

「おういえ」

「おういえ」
2011年06月07日 (火) | 編集 |
ギルドで対岸にわたってから、ソロで何周かしていたら幸運胴が出た。

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ひところなら、高く売れたアイテムだけど、今じゃ売れるのかどうかすらわからない。必要としてる人いるのかしら、これ……。とりあえずベンダーへ。

ギルドに、縦の会ファンだというミカリさんが加入してくれたわ。奇特な人だわ。どうぞ、よろしくお願いします。ふほほ。

弓キャラをつくるべく、武器と防具の研究中。パワスク買う金がまるきりないのだけど、どうしたらよかろうか……。
2011年06月04日 (土) | 編集 |
大宇宙が、ビッグバンと呼ばれる爆発から始まったことを知らぬ人はいないであろう。ビッグバンから現在まで137億年という、とほうもない時間が流れているのだという。

太陽の年齢は、およそ45億年。地球も、太陽と同時期にできたと考えられているそうな。

ナショナルジオグラフィック日本公式 宇宙 http://www.nationalgeographic.co.jp/science/

地球誕生から10億年がたった、およそ36億年前に、最初の生命が誕生した。

生命は、かぞえきれないほどの死と生をくりかえして複雑に進化をとげ、現生人類であるホモ・サピエンスが、アフリカのどこかに現れた。

それから、20万年。

あたくしは、ドトールの壁際の席で温かい紅茶をのんで、いつものように、なすこともなく放心している。寒かった、おとといのことである。宇宙は、どうして、こんなところにたどりついちゃったのであろうか。

むかいの席には髪の長い、目鼻立ちのくっきりとした女性がいて、ケーキのセットを楽しみながら読書をしている。あたくしは、凹凸のおだやかな日本顔が好みなので、くっきりはっきりした顔には、あまり、ときめかない。

と、いいつつ、しっかりと女性のしぐさを視界にとらえている。「見る」という行為。相手がこちらに気づいていず、こちらだけが一方的に見るという、暴力的な関係性。箱男の気持ちが、いまはよく理解できる。

が、甘美なときは一瞬にしてくずされた。

女性が本を置いた。顔をあげて虚空を見すえた。と思ったら、まるで天井にはりついている人と会話をしているかのように、口をパクパク動かしはじめた。声は出していない。

なに……? なにをしているの……?

やがて、機械仕掛けのおもちゃのようにガクッガクッとした動きで、身体をかしげたり、手をあげたりするの。

きゃあ、こわいいいい、なにこの人、こわいいいいい。

あたくしは、内心おびえながらも、こういうやり方で視線の関係性を破壊する方法もあるのだと得心した。「見られる私」から「見せる私」へ。「見られたくない私」から「見たくないものを、見せつける私」へ。

やがて女性は動きを止めて、また本に戻った。しばらくすると本をおいて、口をパクパク、身体をガクッガクッ。それをくりかえす。役者で、演技の練習をしているようにも見えなくもないが、でもドトールの店内で? そんなことするやつ、おるか?

この女性、だれかに似ていると、ずっと思っていたが、わかった。石原真理子そっくりじゃねーかー。いやああああ、こわいいいい。

その間じゅう、右どなりの席では60がらみと思われる男二人が、遺産相続の話で盛り上がっていた。片方は、男泣きして嗚咽をもらしているの。

「親父がね、どれだけ苦労して6割は残るようにしたと思ってるんです。それを、あいつら半分以上、奪おうなんて強欲もいいところだっ。あたしはね、許せませんよ、そんなこと! ぜったいに戦いますよ!」

「いや、わたしもね、間に立ったことがありますでしょ。そうしたら、わたしを悪者扱いですよ。わたしの善意をまるきり理解しちゃいないんだな。わたしはね、なにも分配にくわわろうというんじゃないんだ。ただ、先代の恩を考えるとね、このままあじゃあいけないと思ったんですよ」

「ええ、ええ。おっしゃるとおりでね。稲毛のアニキは、それはもう××さんには感謝してますよ。あたしらは感謝のわかる人間です」

「そう言っていただけると嬉しいんだが、しかし、あいつら、わたしの立場というものを、どう思ってるのか。もう少し冷静になってもらわにゃ話になりませんわ」

「そうなんだ、あいつらは人間じゃないんですよッ!」

……遺産相続で親族がもめているようだった。こんな、へたなドラマみたいな現実ってあるのねえ。それを、ドトールで知るとは思わなかったけど。あたくしは、すっかり市原悦子の気分で聞き耳を立てていた。泣いてるおっさんは興奮して、場所わきまえずに叫んじゃってるんだもの。聞くなというほうが無理よね。

うるさいから、あいている左となりの席に移ろうかと思ったところ、腰のまがった男性がアイスコーヒーを載せたトレイを持って、あぶなっかしく歩いてきた。左にすわるつもりらしい。まあ、いいか。

壁際の席は、小さい丸テーブルの向かいあわせに椅子が二つ置かれて、狭い。男性はあたくしに背をむけて、テーブルとテーブルの間を、もぞもぞと移動している。腰がまがってるものだから、あたくしに尻をつきだしている形だ。

なにを思ったか、後ろにまわした手で尻をおさえた。ぐっ、と急に背筋をのばしたが、痛みがはしったらしく「ぐっ」とうめいて、最前よりさらに尻をつきだす格好になった。尻があたくしの目の前にある。

んー。なんか、今、「フスーーーーーーーッ」て音しなかった? んー。んーううううー。んううううううううううううううううううううううう?

ぎゃあ、しみるー、目にしみるー! 店長、オウムの残党が店内にひそんでるもようです! たすけてー!

やがて、毒ガスは右となりの席にも到達したようで、

「ええ! みんなで力をあわせましょうよ! 先代の努力を守らないと! みんなで知恵をしぼれ……うぐぐっ!」

と、会話が中断した。ふたりして憤怒の目をして、あたくしをギロリと睨むのである。ぎゃあ、ちがう、あたくしじゃないわ!

真犯人のジジイは、なにごともなかったような顔で、アイスコーヒーにガムシロップをふたつもぶちこんでいた。

「あたくし、見たんです! あの人が犯人です! まじで! ちがうの、あたくしじゃないのおおお」

宇宙はいま、千葉のドトールの一隅にて、あたくしと、おならを我慢できぬジジイと、遺産に執着するおっさん二人を邂逅せしめた。

宇宙は、あたくしがジジイのおならを顔にふきかけられ、そのうえ、悪臭の大元と疑われることのために、137億年のときを必要としたのである。

すなわち、ジジイのおならは137億年をかけて宇宙が作りあげたものと言ってよく、これぞ大宇宙の神秘。神の奇蹟の顕現といわずして、なんだというのか。

もう、宇宙なんか滅びてもいいんじゃねーの? という気がしてきた、午後3時のドトール。
2011年06月03日 (金) | 編集 |
*戦国IXA*

大谷吉継を、6000銭にて落札。

弓の守備力が高い武将で、とびぬけて強くはないが、どうしても欲しかったのよね。司馬遼太郎の『関ヶ原』を読んで、惚れこんだのよね。これで「死ねやあああ、死ねやああああっ」プレイができるというものである。

社会人プレイをするあたくしは、とうていトップランカーにはかなわない。好きな武将をあつめて、自己満足脳内戦で楽しむしかないのである。やーねー。

残るは島左近だけど、10万銭の単位で、とうてい買えない値段。どうしたら、よかんべ……。


*近況*

「男性用Tシャツ大量入荷!」と張り紙がしてある古着屋に入ってみた。身体と心の古びたおっさんには、古着が似合うかと思ったの。

品物の大半が女性服で、男の服は片隅にしかなかったが、なるほどTシャツだけは、たくさん掛けてある。

が、なんというか、

「へい、そこのジャップ、有り金全部おいていきな、さわぐと弾ぶちこむぜ、ベイベー」

と拳銃ちらつかせて人を脅すような、日本人を追いつめるとどうなるのかを知らないヤンキーが着てるみたいな、いかにも頭の悪そうなTシャツしかないのよね。見事なもんだよね。

たまに、いいなあと思うやつは首がだっるだるに伸びていて、まるで、

「ちょっとウリ君この写真みてよ、20年前の染井の写真だけど、あいつ昨日、このシャツ着てなかった?」

「なに言ってんの、よく見なよ。帽子も同じじゃん」

「げ、本当だ。もしかしてジーパンも同じじゃね?」

「………………同じだね」

「すげーな」

のような雰囲気がある。だれが買うんだ、こんなの。

と……、サッカードイツ代表のユニフォームシャツを発見。あらやだ、いくらしから。値段をみると500円。あらやだ、ちょうステキ。

が、引っ張りだしてみると、サイズがXLじゃねーか。熊用じゃねーか、うーん残念。

おまけに、醤油かソースかという感じのシミが点々とあるぜ。どんな、あわてんぼうが飯くうと、こんなに跳ね飛ばすんだと思うくらい。

いくら古着にしても、ひどくねーか。これを仕入れて売ろうってのは、どういう魂胆をしているのかしら。

結局、なにも買わずに店をでた。まあ、おっさんは、そんなもん。