2009年09月25日 (金) | 編集 |
パラリにこんな文章が出ている。
彫像が夜な夜な歩き回るだなんて、超オカルト! キャー、こわいわ!
──ルナの街から少し離れた山のふもとに住む、よん太郎という男性が体験した話である。
よん太郎は、数日にわたる狩りを終え、錬成の修行に使う素材を山ほど抱えて、妻と娘が待つ自宅にもどった。
作業小屋に戦利品をつめこんだ袋を放り投げておいて、玄関のドアをあけた。普段ならば、娘が飛びついてきて帰宅を喜んでくれるはずだった。だが、真っ青な顔色の妻と娘は堅く抱き合ったまま、怯えた視線をこちらに向けているだけだった。
異様な雰囲気に、よん太郎は足をとめた。
「どうしたんだ?」
戸惑いながら問うと、二人はホッとした様子で、身体の力を抜いた。
「ねえ、引っ越しましょう」
真剣な表情で妻が言う。
「どうして?」
「この家、もうイヤ。怖いの。あたし耐えられない」
「なにがあったんだ」
よん太郎が必死になだめると、妻が言葉少なに事情を語った。
よん太郎が狩りに出て家を空けていた晩、妻は寝室の窓から月を見上げていた。よん太郎の無事を祈っていたのだという。
と、視界のはしに動くものがある。視線を向けると、黒い人影が庭のすみに植えている、りんごの木の下に立っていた。
侵入者だろうか。
壁にかかっているカンテラを取り、明かりをそちらに向けた。「誰?」と鋭い声をかけると、人影はゆらりと動き、ゆっくりとした足取りで近づいてきた。
木の下闇を抜け出して、月明かりの下に出てきたそれは、人間ではなかった。肌も服も金属の質感を持っていた。庭においてある彫像に似ていた。
(まさか)
と、彫像が置いてある位置に視線を走らせると、台座だけが残されていて、その上に立っているはずの彫像はない。
妻は悲鳴をあげた。驚いた娘がベッドから跳ね起きて、妻のもとに駆け寄ってくる。娘も妻の視線の先に、異様なものが立っているのを見て、悲鳴を重ねた──
はははは、とよん太郎は笑った。彫像が歩きまわったって? 馬鹿馬鹿しい。なにかの見間違いか、寝ぼけていたんだよ。
よん太郎が言うと、妻は色をなして怒った。絶対に見間違いではない。見たのはわたしだけではない。どうして信じてくれないのか。しまいに泣き出した妻は、信じてくれないのなら実家に帰る、とまで言う。
だが、よん太郎は狩りで疲れてはてていた。分かった、必ず明日きちんと調べるから、今晩は寝かせてくれ。そう言うと、妻は不満の態だったが、不承不承に承知した。
その夜半のこと。
妻と娘のけたたましい悲鳴に、よん太郎は飛び起きた。
どうした、なにがあったと訊ねても、二人は抱き合って震えたまま口をきくこともできない様子であった。
妻の背筋をさすり、口にワインを含ませ、懸命に介抱すると、ようやく人心地を取り戻した様子の妻は、彫像が寝室の窓からじっと中をのぞきこんでいたのを見たと言った。今からでも、娘を連れて実家に帰ると言い出す。
何を言うんだ、こんな夜更けに出かけるほうが危ないじゃないかと留めようとしたよん太郎であったが、妻は頑として、もうこの家にはいられないと言い張って、よん太郎の言葉に聞く耳を持たなかった。
さすがに頭に血がのぼりかけたよん太郎だったが、娘の様子が、それを思いとどまらせた。娘は放心状態で、瘧にかかったかのように全身を震わせている。妻が強く抱きしめて、「よん子、よん子」と呼びかけるが、まるで反応がない。
妻が冷たい目で、よん太郎を見上げる。この子の様子を目にしても、まだわたしを信じてくれないのか、と非難しているようであった。
「分かった。様子をみてこよう」
よん太郎は、カンテラに火を入れて外に出た。
彫像が動くなどと、そんなことあるはずがない。だが、二人の様子は尋常ではない。見間違いだとは思うが……。
彫像は、いつもの姿で、いつもの位置に立っていた。どこにも変わった様子はない。ほうらな。よん太郎は、安堵のためいきをついた。女子供ってのは、よく幻覚を見るっていうからな。神経が細やかすぎるんだろうな。
そんなことを思いながら、彫像の周囲を一周して、ふと気がついた。台座に泥の汚れが残っている。なんだこれは? カンテラを向けて、背筋にゾッと悪寒が走った。
足跡であった。
よく見れば、足跡は一つだけでない。台座の上にいくつも残っている。地面を照らすと、かなり重い物体が動き回ったのか、土に深く沈んだ足跡が何十個と重なっていた。
(そんな馬鹿な……)
おそるおそる彫像の足元に、カンテラの明かりを向けた。彫像の足は、べったりと泥で汚れていた……。
よん太郎は激しい音を立てて、寝室のドアを開けた。
娘は妻の胸に顔をうずめて、しくしくと泣いている。妻の頬にも涙の筋が光っていた。妻がどんより沈んだ目を、よん太郎に向けた。
「家を出よう」
よん太郎は言った。
*****************
と、今日もブリタニアのどこかで、そんな怪異譚が生まれているに違いない。怪談マニアのあたくしは背筋がゾクゾク震えてしまう。
このバグ、修正しなくてよいと思うの。いっそのこと、「呪われたスタチュー」なんていうイベントに仕立て上げるのは、どうかしら。うふん。
■キャラクタースタチューメーカーのバグ (参照)
少し前に、長期プレイヤー報奨制度のスタチューにバグがあり、DEEDに戻すように案内されていたものの、具体的にどのようなバグなのか、どのアイテムのことなのか不明でしたが、その詳細が案内されています。
以下、公式より。
「パブリッシュ60導入後より、6年報奨のキャラクタースタチューメーカーを使用して作製されたキャラクター彫像の一部が、台座を離れて周辺を歩き回る問題が確認されております。
現在自宅にキャラクター彫像を設置されている方におかれましては、修正パブリッシュが導入されるまでの間、安全のため彫像を証書に戻して様子を見ていただけますようお願い申し上げます」
彫像が夜な夜な歩き回るだなんて、超オカルト! キャー、こわいわ!
──ルナの街から少し離れた山のふもとに住む、よん太郎という男性が体験した話である。
よん太郎は、数日にわたる狩りを終え、錬成の修行に使う素材を山ほど抱えて、妻と娘が待つ自宅にもどった。
作業小屋に戦利品をつめこんだ袋を放り投げておいて、玄関のドアをあけた。普段ならば、娘が飛びついてきて帰宅を喜んでくれるはずだった。だが、真っ青な顔色の妻と娘は堅く抱き合ったまま、怯えた視線をこちらに向けているだけだった。
異様な雰囲気に、よん太郎は足をとめた。
「どうしたんだ?」
戸惑いながら問うと、二人はホッとした様子で、身体の力を抜いた。
「ねえ、引っ越しましょう」
真剣な表情で妻が言う。
「どうして?」
「この家、もうイヤ。怖いの。あたし耐えられない」
「なにがあったんだ」
よん太郎が必死になだめると、妻が言葉少なに事情を語った。
よん太郎が狩りに出て家を空けていた晩、妻は寝室の窓から月を見上げていた。よん太郎の無事を祈っていたのだという。
と、視界のはしに動くものがある。視線を向けると、黒い人影が庭のすみに植えている、りんごの木の下に立っていた。
侵入者だろうか。
壁にかかっているカンテラを取り、明かりをそちらに向けた。「誰?」と鋭い声をかけると、人影はゆらりと動き、ゆっくりとした足取りで近づいてきた。
木の下闇を抜け出して、月明かりの下に出てきたそれは、人間ではなかった。肌も服も金属の質感を持っていた。庭においてある彫像に似ていた。
(まさか)
と、彫像が置いてある位置に視線を走らせると、台座だけが残されていて、その上に立っているはずの彫像はない。
妻は悲鳴をあげた。驚いた娘がベッドから跳ね起きて、妻のもとに駆け寄ってくる。娘も妻の視線の先に、異様なものが立っているのを見て、悲鳴を重ねた──
はははは、とよん太郎は笑った。彫像が歩きまわったって? 馬鹿馬鹿しい。なにかの見間違いか、寝ぼけていたんだよ。
よん太郎が言うと、妻は色をなして怒った。絶対に見間違いではない。見たのはわたしだけではない。どうして信じてくれないのか。しまいに泣き出した妻は、信じてくれないのなら実家に帰る、とまで言う。
だが、よん太郎は狩りで疲れてはてていた。分かった、必ず明日きちんと調べるから、今晩は寝かせてくれ。そう言うと、妻は不満の態だったが、不承不承に承知した。
その夜半のこと。
妻と娘のけたたましい悲鳴に、よん太郎は飛び起きた。
どうした、なにがあったと訊ねても、二人は抱き合って震えたまま口をきくこともできない様子であった。
妻の背筋をさすり、口にワインを含ませ、懸命に介抱すると、ようやく人心地を取り戻した様子の妻は、彫像が寝室の窓からじっと中をのぞきこんでいたのを見たと言った。今からでも、娘を連れて実家に帰ると言い出す。
何を言うんだ、こんな夜更けに出かけるほうが危ないじゃないかと留めようとしたよん太郎であったが、妻は頑として、もうこの家にはいられないと言い張って、よん太郎の言葉に聞く耳を持たなかった。
さすがに頭に血がのぼりかけたよん太郎だったが、娘の様子が、それを思いとどまらせた。娘は放心状態で、瘧にかかったかのように全身を震わせている。妻が強く抱きしめて、「よん子、よん子」と呼びかけるが、まるで反応がない。
妻が冷たい目で、よん太郎を見上げる。この子の様子を目にしても、まだわたしを信じてくれないのか、と非難しているようであった。
「分かった。様子をみてこよう」
よん太郎は、カンテラに火を入れて外に出た。
彫像が動くなどと、そんなことあるはずがない。だが、二人の様子は尋常ではない。見間違いだとは思うが……。
彫像は、いつもの姿で、いつもの位置に立っていた。どこにも変わった様子はない。ほうらな。よん太郎は、安堵のためいきをついた。女子供ってのは、よく幻覚を見るっていうからな。神経が細やかすぎるんだろうな。
そんなことを思いながら、彫像の周囲を一周して、ふと気がついた。台座に泥の汚れが残っている。なんだこれは? カンテラを向けて、背筋にゾッと悪寒が走った。
足跡であった。
よく見れば、足跡は一つだけでない。台座の上にいくつも残っている。地面を照らすと、かなり重い物体が動き回ったのか、土に深く沈んだ足跡が何十個と重なっていた。
(そんな馬鹿な……)
おそるおそる彫像の足元に、カンテラの明かりを向けた。彫像の足は、べったりと泥で汚れていた……。
よん太郎は激しい音を立てて、寝室のドアを開けた。
娘は妻の胸に顔をうずめて、しくしくと泣いている。妻の頬にも涙の筋が光っていた。妻がどんより沈んだ目を、よん太郎に向けた。
「家を出よう」
よん太郎は言った。
*****************
と、今日もブリタニアのどこかで、そんな怪異譚が生まれているに違いない。怪談マニアのあたくしは背筋がゾクゾク震えてしまう。
このバグ、修正しなくてよいと思うの。いっそのこと、「呪われたスタチュー」なんていうイベントに仕立て上げるのは、どうかしら。うふん。
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2009年09月25日 (金) | 編集 |
時に御主人はどうしました。相変わらず午睡ですかね。午睡も支那人の詩に出てくると風流だが、苦沙弥君の様に日課としてやるのは少々俗気がありますね。何の事あない毎日少しずつ死んでる様なものですぜ。
──「吾輩は猫である」 夏目漱石
午睡と書いて、ひるね。昼寝と書くより、風情があるね。
で、連休中、すっかり午睡の癖をつけてしまったあたくしは、仕事中眠くて眠くて仕方がなかった。俗気の塊なの。すみません。
だもので、帰宅してから寝て、夕飯をいただいて寝て、風呂入ってから寝てと、だらだら寝をしたら、こんな時刻に目が覚めたの。いやだわ、生活のリズムが台無し。
半分寝ぼけていたもので、冷蔵庫からビールなんぞ取り出して一気飲みした。あー、うまい。
あらやだ、仕事休みじゃないのに、休みのつもりで飲んじゃったわ。惚けているにも程があるわ。どうしましょう。
といって、すでに身体に入れてしまったアルコールを取り出すわけにもいかない。ええい、こうなったら朝まで飲んでたことにして、アルコールのにおいをぷんぷんさせてご出勤じゃー。
景気づけに、ビール350mlと、氷結うめ味500mlをいただいたのである。なるようになるのであって、もうしらねえ。
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