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捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2018年10月02日 (火) | 編集 |
「野球経験のない皆さんは、基礎練習から始めます。ぼくがボールの投げ方を指導します。バッティング練習は、ウリくんに従ってください」

「うーす」

「ボールの持ち方は、このように。身体の使い方は、このように」

「こうかな?」

「早井さん、さすがだね。野球経験ゼロで、いきなり球速100キロ超えって。たいしたもんだよ」

「そう? へっへっへ。教え方がうまいんだよ。おれ、すごく楽しくなってきた。がんばるよ」

「期待してます!」

「……雲須さん、ちょっといいですか」

「どした?」

「わたしは、どうですか」

「うーん。あのね、どうして教えたこと、ひとつも守らないの?」

「いえ、教えられた投げ方だと、わたしは肩が痛いんですよ。仕方がないんですよ」

「へえ、そうなんだ。だったら、好きにやればいいんじゃないかな」

「いや、わたしだって、まともに投げればすごいんですよ。でも肩が痛いんだから仕方ないんですよ。もっと肩が痛くない投げ方ありませんか」

「それは、肩がなまってるだけなので準備運動しっかりするか、普段からストレッチをお願いします」

「はあ、そうですか」

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「早井さん、すごすぎるよ。たぶん、110キロ超えてると思う。もう少しコントロールが落ち着いたら、ピッチャーやってもらうかもしれない」

「うれしいけど……スタミナたりないわ……もう、だめだ……少し休ませて」

「もちろん、どうぞ。水分とっててください」

「雲須さん、次はわたしを教えてください」

「はい、はい」

「早井さん、30球でバテるんじゃ使い物にならないですよ。どう考えても。わたしは、2時間でも3時間でも投げられるんですよ。わたしを使ったほうがいいと思うんですけどねえ」

「へえ、そうなんだ」

「わたしにカーブを教えてください。わたしは変化球で打者をしとめたいんですよ」

「カーブは、こうね」

「どうですか。曲がってますか」

「うーん、えーと、まあ、曲がってる……かな」

「いやあ、わたしってどう考えても異様にすごいじゃないですか。一球でカーブをおぼえたんですよ。もっと、いろんな変化球をおぼえますから期待しててくださいね」

「へえ……そうなんだ」

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「雲須よ」

「どうした、ウリくん」

「雲須が教えてたから、おれは余計な口ださないでおこうと思って黙ってたけどさ、あいつ、なんなの?」

「見てたのね」

「2時間でも3時間でも肩がもつって自慢、あんな気の抜けた投球で疲れるわけないよね。早井くんがダウンするのは、一球ごとに全力使ってるからだよ」

「そういうことだね」

「野球は時間耐久キャッチボールゲームじゃないんだから、3時間キャッチボールできることに何の価値があるわけ」

「うん」

「あいつのストレート、球速70出てないでしょう。そのレベルで変化球とか、笑わせんなって感じなんだけど。おれ、全球ホームランぶちこむ自信あるわ。まさか、アイツをピッチャーで使うつもり?」

「使うわけないよ。あんなの出したら、相手が怒るよ」

「そうだよね。安心した」

「あいつ、早井くんに対抗してるんだよ」

「えっ。どこに対抗できる要素があるの」

「傍目からは勝負にならないけど、本人の意識はそうよ。早井くんが30球でダウンするから、自分は3時間。早井くんがストレート110キロ出すから、自分は変化球。そういう対抗の仕方するやつだよ」

「うーん……」

「UOも、そうだったじゃん。ぼくらがボス通うから、わたしだってジュカに行けます、って。正面からの勝負では勝てない、負けたらメンツがつぶれる。そればかり気にしてるから、正道を避けてニッチに進む。何事も、かならず言い訳を準備してから入るのも、そう。一緒にプレイヤーになるべきなのに、評価してあげますとか、自分の立ち位置ずらすのも同じ。全部、逃避よ。昔から、姑息だったじゃん」

「たしかに……」

「野球は、サバゲ以上の対外戦でしょ。今日は肩が痛いからコントロール悪いですが許してください、とかの言い訳が、相手に通用するわけないじゃん? そんなピッチャー出したら、チーム全体の正気を疑われるよ。まるきり外への意識が頭にないんだ。いつまでたっても意識が内向きなんだよ。仲間に対してだけ、プライド守りたい。仲間から、称賛されたい。それだけの人間よ」

「だとしたら、何の役にも立たないじゃん。ここまで使えないとは思わなかった。驚いたよ」

「なかなか、いないよね」
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2018年10月01日 (月) | 編集 |
「やあ、Aさん」

「あ、サバゲの誘い? 将軍には、もう断ったよ」

「いや、サバゲじゃない。今度は、草野球始めようと思うんだ」

「えっ、面白そう、やるやる!」

「Bさん、野球やらない?」

「まじ? 野球なら、やりたい!」

「Cさん、野球経験者だよね。ぜひ助けてほしい」

「久しぶりだな、やりたい」

「Dさん、野球やろうよ」

「また将軍が頭張るの? おれ、行きたくないな」

「いや、ぼくとウリくんが責任者です」

「あっ、それなら参加する。友達も連れてっていい?」

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「12人集まった」

「まあなんつったらいいんでしょ、あなたもようやく、やる気を出してくれたんですね」

「なにが?」

「これで復活できましたね」

「なにが?」

「あなたがやる気を見せてくれたので、わたしも、もう一度頑張ろうと思います。ただ、わたしは野球経験ないんですよ。やはり、リーダーが下手なのは、どう考えても困りますから、こっそり教えてください」

「なにが?」

「野球は、どれくらいの割合でやるんですか?」

「月に一回かな」

「じゃあ、サバゲも月に一回できそうですね。野球とサバゲ、交代でやりましょう」

「サバゲ? やらんよ」

「えっ。どうしてですか。せっかく人を集めたじゃないですか。リーダーのわたしを無視して勝手に決めるのは許しませんよ。わかりましたね」

「草野球チームだから、サバゲは関係ない。チーム名は決めてないけど、馬狸猿団じゃない。それと、ぼくとウリくんが共同リーダーね」

「えっ、どういうことですか」

「何を驚くことあるの。人集めたの、ぼくなんだけど。道具揃えたの、ウリくんなんだけど。きみ、何か働いた? ぼくら子どもの頃から野球好き。プロ野球もよく見てる。きみは野球好き? ルール知ってる? リーダー務まるわけないよね」

「わたしだって、ファミスタなら買ったんですよ。わたしぬきで、うまくいくと思ってるんですか」

「思ってる」

「はああああ? どう考えても、うまくいくわけないじゃないですか。あなたとウリが、馬狸猿団をつぶしたんじゃないですか。ぜんぜん運営できなかったじゃないですか。あなたとウリは、自分が思ってるほど頭よくないんですよ。能力が足りないんですよ。異様に。まあ、なんつったらいいんでしょ、もう少し、自分のことをわかったほうがいいと思うんですけどねえ」

「へえ、そうなんだ。馬狸猿団は15年間つづいたよね。毎回の連絡、場所決め、移動の指示、当日の進行、打ち上げの食事会、親睦飲み会の幹事、全部、ぼく。ぼくが動かしてきた行事の、のべ回数と、のべ人数がどれくらいになるかね。この実績を認めないのなら、ご自由に。でも、運営する能力のない人間が声かけたら、友達呼んで参加してくれる人もいるんだよ。じつに不思議だよね。どう思う?」

「いえ、わたしは松垣さんと長沼さんには、雲須とウリがリーダーの野球チームなんか、どうせ失敗するに決まってる、絶対に深入りするなって言ってありますから。わたしたちは力を貸しませんよ。さあ、どうするんですか」

「へえ、そうなんだ」

「わたしたちが協力しないんじゃ、絶対にうまくいかないと思うんですけどねえ。さあ、どうするんですか」

「へえ、そうなんだ」
2018年09月11日 (火) | 編集 |
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